8月31日にアフガニスタンの首都カブールから米軍が完全撤退してから、武装勢力タリバンがアフガニスタン全土を制圧し、厳格なイスラム法に基づく統治をすると宣言しました。その波及でイスラム国ISIS勢力のテロ活動が活発になり、世界中に混乱をもたらす様相を呈しています。日本に住む日本人も、私のようにアメリカに住む人にとってもこの混乱は「遠いところの出来事」では済まないと考えています。

長年アフガニスタンのペシャワールで現地支援活動してきたクリスチャンの故中村哲医師は、大規模な灌水工事によって、土地を肥やし、緑を復活させ、農業によって現地の人が自立できるように支援してきました。その活動が現地の人達の絶大な支持を得て、中村医師は英雄と呼ばれ尊敬されました。彼はキリストの福音、イエスの愛をそのままペシャワールの人たちに「生き様」によって示し、ペシャワールの人たちも彼を愛しました。しかし、2019年中村医師は武装勢力によって殺害されました。

イスラム教徒が多いイスラム圏への福音伝道は非常に困難で多くのチャレンジがあります。相手の信じている宗教を真っ向から否定するのではなく、福音の真実、創造主でおられる神の愛の深さ、イエスキリストの憐みと恵みによる救いを「説得させる」のではなく、「行動」あるいは「生き方」によって示す必要があります。それは自分と違う信念を持っている人を迫害し排除することではなく、相手を自分と同じ人間として愛することです。過激なイスラム教徒がジハード(聖戦)の名のもとに自爆テロで死ぬことによってのみ、確実に天国に行ける確約を得るという考えは、その行為、行動が自分が100%救われて天国に行けるという確信がない「不安」によるものであり、「怖れ」に基づく行動原理であります。そこには聖書でいう愛は見えません。多くのイスラム教徒は全き救いの確信がありません。イスラム教では100%天国に行ける道はジハードしかないという教理、その教理原則があるという現実を世界は知る必要があります。

使徒パウロはガラテヤ書でこう書いています。「キリストは、今の悪の世界から私たちを救い出そうとして、私たちの罪のためにご自分をお捨てになりました。私たちの神であり父である方のみこころによったのです。」1章4節

この書で何度もパウロはイエスを信じて救われたクリスチャンの信仰はキリストの愛によるものであり、律法(人の努力)によるものではないと語っています。5章13節では「愛をもって互いに仕えなさい」とあります。続けて14節で「律法の全体は『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ』という一語をもって全うされるのです。」とあります。中村医師は宣教師という建前ではなく、現地支援という形で長年活動してきました。しかし彼のペシャワールでの活動は正に聖書のいう「隣人をあなた自身のように愛せよ」を体現したものであり、彼によって多くの現地の人たちはイエス・キリストの愛を見たのではないでしょうか。イエス・キリストの愛は、「怖れ」を凌駕するものであり、その愛によってのみ人は救われるという福音が今の世界に必要であるとうことを実感しています。キリストの福音が一人でも多くの人に届きますように強くお祈りします。